薬事法改正、医療分野のイノベーション、日本経済再生にむけた緊急経済対策に関する要望書

2013/02/12 ニュース by biotech

平成25年2月12日

厚生労働大臣 田村 憲久 殿

日本バイオテク協議会

会長 山 田 英

薬事法改正、医療分野のイノベーション、日本経済再生にむけた緊急経済対策に関する要望書

要望事項

1. 薬事法の改正1)

次期通常国会に向けて準備されている薬事法の改正に関して、以下の項目について要望します。

(1)  再生医療製品の早期の実用化に対応した承認制度を実現していただきたい。

(2)  早期の実用化に対応した承認制度は、再生医療製品だけでなく、難病・希少疾病用医薬品・医療機器等もその対象としていただきたい。

(3)  日本発のイノベーティブな医療技術(遺伝子治療や核酸医薬、DDSなど次世代バイオ医薬品、再生医療、細胞治療、難病・希少疾病用医薬品・医療機器等)の開発促進と産業振興を目的とし、その根拠となる法令を制定し、行政組織・管理職を設置していただきたい。

2.  医療分野のイノベーション

イノベーティブな医療技術については、開発リスクが高く、適用患者が少ないことから、それを適切に反映した保険適用方法(薬価・保険償還価格の算定方法)を検討していただきたい。

3.  日本経済再生に向けた緊急経済対策(1月11日閣議決定)2)

民間投資の喚起による成長力強化策として、以下の経済対策をお願いしたい。

(1)    医療関連イノベーションの促進

①     医薬基盤研究所における創薬支援機能の強化*1);研究振興部における希少疾病用医薬品等振興業務及び研究振興業務の予算枠の一桁拡大。

②     臨床研究中核病院等における治験環境整備*2);治験環境基盤構築予算の拡大と特に真水予算(研究費等)の拡大、また環境整備においてアカデミアとバイオテク企業との提携(産学共同治験等)を促進する。

③     早期承認制度の導入*3):再生医療製品に限定することなく、日本発のイノベーティブな医療技術を対象に開発・実用化促進につなげる。

④     再生医療の安全性等を確保しつつ、細胞培養加工の医療機関外委託も可能となるような枠組みの整備*4);薬事法で提供される再生医療と医師法・医療法で提供される再生医療の特性に則した基準を整備するとともに、安全性を確保しつつ迅速かつ安価に再生医療を国民に届けるための法令を整備する。

(2)バイオテク産業の振興

①     日本政策金融公庫、商工中金による経営支援と一体となったセーフティネット貸付の創設*5);バイオテク企業向けセーフティネット貸付の創設を経産省、財務省と連携して進める。

②     企業のイノベーションを促進するための研究開発税制の拡充*6);バイオテク企業向け投資者の投資額の全部または一部について損金算入もしくは税額控除をお願いしたい。

背景とその説明

1. 薬事法の改正関連

次期通常国会に向けて準備されている薬事法の改正1)のなかで、再生医療製品の早期の実用化に対応した承認制度が検討されており、再生医療でしか救えない患者さまにとっては、朗報であります。

汎用性の高い医薬品を開発する際の症例集積とは異なり、このような新しい治療法の対象患者はごく少数であることが多く、従来の承認審査制度における有効性・安全性レベルを確立するには極めて多くの時間を要することになります。それ故、治療を待ち望んでいる患者さまが新しい治療法へアクセスすることに遅れてしまう懸念があります。この点、検討中の新しい承認制度は安全性の確認と有効性が示唆された時点で承認され、臨床使用が可能になるので、患者さまのアクセスが早まるとともに、その後の症例データの集積性が高まり、ひいては新しい治療法の早期確立が得られるものと期待され、是非実現していただきたい承認制度であります[要望事項1.(1)]。同時に、難病・希少疾病用医薬品・医療機器も再生医療製品と同様の課題と期待があるため、早期の実用化に対応した承認制度の対象として検討していただきたく要望いたします[要望事項1.(2)]。

下記3にも関連しますが、日本発の基礎研究から生まれた先端医療技術の実用化を担う我が国バイオテク企業が、「POC取得や承認要件を満たす治験」を実施するための資金調達の方途が限られている為、日本の革新技術が国外に流出していることは否めません。日本発のイノベーティブな医療技術の開発支援、規制緩和、資金の供給等を通じて、成長による富の創出を確実かつ持続的に得られるよう、バイオテク産業の振興を目的とした根拠を法令として制定し、行政組織・管理職を設置していただくことを要望いたします[要望事項1.(3)]。

2. 医療分野のイノベーション関連

日本発のイノベーティブな医療技術(遺伝子治療や核酸医薬、DDSなど次世代バイオ医薬品、再生医療、細胞治療、難病・希少疾病用医薬品、医療機器等)は、従来の治療法、医薬品・医療機器に比べ開発リスクが高いうえ、適用患者が少ないため、採算性の問題から企業が開発に二の足を踏みかねません。そのためその評価に関して、当協議会は「医薬品等の制度改正に関する要望書」3)において、新たな薬価算定方式の導入を提案させていただきましたが、現時点で具体的な解決には至っておりません。「医療イノベーション5か年戦略の着実な推進」4)ではイノベーションの適切な評価が課題に上げられておりましたが、新たな薬価・保険償還価格制度の実現に向けてイノベーティブな医療技術の保険適用方法(薬価算定方法)についても議論を深耕していただきたく要望いたします[要望事項2.]。

3. 日本経済再生に向けた緊急経済対策(1月11日閣議決定)関連

我が国のバイオテク企業の経営基盤は脆弱であり、欧米に比べ後れをとっているといわざるを得ません。そのためには、世界に先駆けて本邦において新しいイノベーティブな医療技術を確立すること、またこれらを創製するバイオテク産業を振興することが重要と考えられます。バイオテク企業にとっては、資金調達が喫緊の課題であります。日本版SBIRを充実し、上場企業を含めた国内バイオテク企業へのリスクマネー供給やセーフティネット貸付の拡充を要望いたします[要望事項3.(2)①]。

現在、研究開発減税として税額控除の上限を法人税の20%から30%への引き上げが検討5)されておりますが、バイオテク企業が経常利益を出して法人税を支払うようになるにはまだ時間が必要であり、我が国バイオテク企業の多くはその恩恵を受けることができません。税制による産業振興としては、むしろバイオテク企業への投資者が税のメリットを受けることができるように、個人投資家だけでなく法人も対象にその投資額に対し損金算入または税額控除制度の導入を要望いたします[要望事項3.(2)②]。

最後に「日本経済再生に向けた緊急経済対策」2)では、成長による富の創出を期待して、研究開発、イノベーション推進に関する民間投資の喚起による成長力強化が提言されております。とりわけ医療関連イノベーションの促進に関連して、要望事項に記載させていただいた経済対策をお願いいたします[要望事項3.(1)①②③]。

参考資料

1)薬事法の改正 参考資料

http://www.pmda.go.jp/guide/kagakuiinkai/24saibou/h241226gijishidai/file/shiryo3.pdf

2)「日本経済再生に向けた緊急経済対策」について;閣議決定(平成25年1月11日)

http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/__icsFiles/afieldfile/2013/01/11/20130111keizaitaisaku.pdf

*1) 9ページ21行、*2) 9ページ21行、*3) 9ページ27行、*4) 9ページ28行、

*5) 12ページ8行、*6)10ページ10行

3) 医薬品等の制度改正に関する要望書;日本バイオテク協議会(平成23年11月24日)

http://samurai-biotech.jp/?p=147

4)医療イノベーション5か年戦略の着実な推進;第74回科学技術部会(平成24年10月18日)

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002mcth-att/2r9852000002md59.pdf

5)平成25年度税制改正大綱(平成25年1月25日 自由民主党 公明党)

http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/pdf085_1.pdf

【本件に関する問い合わせ先】

日本バイオテク協議会 http://samurai-biotech.jp/

幹事長 関 誠(アンジェスMG) 電話 03-5730-7871

幹事長代理 菅谷 勉(ノーベルファーマ) 電話03-5651-1160


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